米国のトランプ大統領は2020年4月22日、いわゆる「グリーンカード」と呼ばれる永住権の発行を、60日間停止することを決めました。

とはいえ、すでに米国にいる家族や就労者などは対象から免除されますし、そもそも全国の米国大使館の業務が止まっているため、影響を受ける申請者は限定的とみられます。

当事務所では非移民ビザの申請サポートを中心にご提供していますが、報道によると、今後非移民ビザの審査にも影響を及ぼす可能性はあるようなので、引き続き注意しています。

今回は、大統領令の法的な位置づけも合わせて、考察してみました。

COVID-19影響下のアメリカビザ申請情報に関する、前回の記事はこちら↓

COVID-19の感染の影響を考慮して、在日米国大使館および領事館は、3月19日(木)より一部の面接業務を停止しています。 これは本国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)の勧告を受けた、国務省の指示によるものです。 1週...続きを読む

大統領令(Proclamation)とは?

今回のグリーンカードの一時発給停止は、日本語のニュースでは「大統領令」としていますが、英語ではProclamationと言います。

日本は議会制民主主義で大統領制ではないので、大統領令のようなトップダウンの命令はありません。

米国大統領が発令する行政命令は、下記の3種類があります。

【Executive Orders】

連邦政府や軍に対する行政命令ですが、議会の承認を得ず直接発令することができ、法的効力があります。本来の「大統領令」はこちらを言うようです。

【Memorandum】

日本語に直訳すると覚書、Executive Ordersと同様の効力がありますが、官報に載せるほどではない命令です。日本ではこちらも「大統領令」と解されているようです。

【Proclamation】

大統領による宣言。上記の二つに比べると儀礼的な位置づけになり、議会の承認を受けないと法的効力はありません。今回の報道では、proclamationも「大統領令」とされていますね。

 

行政書士的見方で上記3つを日本に当てはめて考えると、

Executive Orders→通知

Memorandum→告示

Proclamation→日本は大統領制ではないので、無し

となりますかね(独自解釈です^^)。

結局

日本の報道では、トランプ大統領が移民の受入れを一時的に停止したと報道され、「元々強硬な移民政策をとってきたトランプ大統領が、またやってくれた」的な印象があります。

しかしサインしたのは”宣言(Plocalamation)”に過ぎず、また実際問題として、世界中にある米国大使館がビザの審査および発給業務を停止している今では、直接的な効果はないように思います。

11月の大統領選挙を意識しての、アメリカ人就労者を守る発言でもあるのでしょう。

ただこの宣言をきっかけに、今後は永住権だけでなく非移民ビザの要件もさらに厳しく、あるいは検疫上の要件が上乗せされることが考えられますので、引き続き情報収集していきたいと思います。

 

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