香港の民主化デモが継続しています。
国交正常化しつつある中国に対し10月1日の国慶節後も日本では大きく報道されませんが、9月25日に米国の下院で重要な法案が可決しました。
※実際に運用されるには、大統領のサインが必要です。
※2019年11月、上院の本会議でも可決される見込みだそうです。
香港人権民主法案
Hong Kong Human Rights and Democracy bills
アメリカにはもともと香港政策法(1992年)というものがありました。
香港は中国本土とは異なる独立した地域であるとの前提から、米国の自由貿易の相手国として貿易及び輸出規制、関税やビザにおいて、中国とは別扱いされているのです。
米中の貿易戦争は世界中が懸念している問題ですが、そういえば香港は対象外ですよね。
今回の法案は、この香港政策法に、香港が民主的自治区であるかどうかを米国が毎年報告を受けることを付け加えるものです。
反発する中国政府
当然のことながら、この決定に中国政府は反発しています。
中国の立場としては、一国二制度であろうとも香港は中国の一部。
中国の対応に影響を及ぼすような法案可決は、中国政府のやることにいちゃもんをつけるのと同じだからです。
しかしアメリカとしてはそうではなく、これまでアメリカが国際金融都市として香港を尊重し継続してきた優遇措置を、香港の自治が脅かされる(=中国政府の管理下になる)なら、もう優遇できませんよという姿勢を示したものです。
理屈上は決して内政に口出しするものではなく、これまで優遇してきたものを変えるよという姿勢なのですが。
と言うと、日本国民としては聞き覚えがありませんか?
韓国に対する輸出管理の優遇措置をやめた、いわゆるホワイト国除外です。
アメリカとしては、香港を貿易の対象国として見たときに、民主的な自治が行われているかどうかで自国の対応を変えますよーというだけ、なんですよね。
法案の内容
具体的には、下記のような内容が盛り込まれています。
・香港は国際都市であり、国際社会が香港の自治を認めなければならない
・香港政策法の下で米国は香港に通商や投資、出入国、海運等の諸方面において特別待遇を提供する
・香港に付与した特別待遇を濫用・悪用していないかを監督し、牽制する
・香港の自治権の毀損が認められた場合、米国は香港に与えてきた特別待遇を打ち切ることができる
米国だけでなく、世界中の国々が香港に事業を展開し資産を保有しており、米国民だけでも8万人以上が居住しているそうです。
しかし香港政策法だけでは、香港が特別待遇を受けられる基準が明確ではなかったことから、今回の法案が付け加えられることになった、というのがアメリカ側のストーリーです。
ビザとの関係
2018年のB1B2ビザの却下率をみると、香港は4.25%と低い水準です(ちなみに日本は9.76%)。
ビザ却下率についてはこちらの記事もご参照ください↓
中国本土と違って香港は、自由経済や法治国家であるといった分野で国際基準に達しているため、今日の国際金融都市としての地位と特権があるのです。
またESTA加盟国ではないものの、香港特別行政区HKSAR( the Hong Kong Special Administrative Region 、香港特別行政区)居住者やBNO(British Nationals Overseas、返還時に英国のパスポートを持っていた)の人は、グアムやサイパンならビザなしで行けるという優遇措置もあります。
中国は何もできない?
香港の自治を侵害すると、例えば米国における資産を凍結したり米国入国を拒否したりといった制裁を受けるかもしれません。
たとえば今回のような民主化デモに対して中国政府が武力で鎮圧したりすると、その関係者らが制裁対象となります。
これまで中国の富裕層は、香港の国際金融都市としての機能を利用して米国に資産を移している人がたくさんいると言われています。
この優遇がなくなると富裕層は困るはず。
中国政府が香港を強引に支配下に置こうと思っても、裕福な共産党員の足を引っ張ることになってしまうため、おそらく反対はできないとの見方が主流なのだそうです。
また、米国議会は民主党と共和党議員が協力してこの法案を可決した事実もあります。
要は、来年万一トランプ大統領が落選しても、党派を超えてこの法案を維持できるようにしているそうです。
本記事の無断複製、転載、転用、配布は、固くお断りいたします。
2019年11月追記
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