インドのビジネス環境
今年5月の政権交代をきっかけに、海外から製造業を積極的に誘致しているインド政府。
前回はインドビジネスの魅力や日系優遇政策についてご報告しましたが、日系企業の動向は今どうなっているのでしょうか?
ビジネス環境や注意点を、JETROのデータ、現地からの報告を元に見ていきます。
【地域別】
ご存知の通りインドは広い国です。日系企業の進出拠点は2542カ所にわたりますが、そのうち710社が北東部に、866社が南部にあるそうです。
北東のデリーには古くから日系企業が進出していて、メーカーの販売拠点や、商社、金融、駐在員事務所など175拠点があり、日本人にとって利便性の高い場所と言えます。
南部のチェンナイがある地域では、ITの集積地として知られるハイデラバードが、10年後に分離独立した州の州都となるため、新しい州都の開発や産業振興を進めています。
貿易港(チェンナイ)の充実や自動車メーカーの集積から、部品製造などの製造業の進出が相次ぎ、インドのデトロイトとも呼ばれています。
他にも、西インドに位置するグジャラート州はインフラ整備が最も進んでいる地域、コルカタ周辺の東インドは、開発は遅れているものの人口の多さ(西ベンガル州域内だけで3億人)が魅力だとか。
【産業別】
産業から見てみると、自動車産業に部品調達のための裾野産業が追うように進出、またインド国内の消費拡大に合わせて電気などの消費材産業が出ています。
こうした日系の動きに伴っての、広告、物流、ホテルなどのサービス業の進出も活発化しているとのこと。
直近では今年10月にソフトバンクが、インドのインターネット通販に3割超出資して筆頭株主になること、合わせてタクシー配車プラットフォーム事業者、不動産仲介サイトにも出資することを発表(12月)しています。
もともとインドはIT技術に優れ、優秀な人材が豊富ですが、この人材獲得の優位から、製造業でも研究開発拠点を設ける動きが強まっているそうです。
注意点
しかし、そこは新興国、良いことばかりではありません。
JETROの行った、アジア・オセアニア地区の日系企業に対するアンケートの結果では、7割以上の企業が
- インフラ
- 税務
- 行政手続
を、課題としています。インドに限っての問題点は、
①インフラの未整備
電力不足を補強するために自家発電を利用する予定だったのが、現実はそれがメイン電源となってしまった、物流事情の悪さから必要な部材が到着しない、などだけでなく、手頃な工業団地の不足という問題もあります。
売りに出ている工業団地は、土地の整備すらされていない状況なのだとか。
インドに立ち上げ期間が短くて済む「レンタル工場」は存在しないようです。
②税制・税務手続の煩雑さ
税体系が複雑で、通達レベルで税率も頻繁に変更される、現地の専門家でも人によって回答が違ったりするそうです。
州をまたぐ販売にかかる州税も、特徴の一つです。
③行政手続の煩雑さ
事業を行う上での許認可は、中央政府と州政府で管轄が異なり、窓口の対応も様々で賄賂もまだ存在するそうです。
手続を順調に進めるための事前準備をしても、現地で全てをひっくり返される…ことがあり得ます。
上記以外でも、労務法務が複雑なため、現地の専門家に頼らざるを得ない一方で、信頼しすぎも良くないとのこと。
日本人駐在員が少ないと、現地スタッフのやりたいようにされてしまうなど、常に緊張感が必要な印象です。
まとめ
- 購買力、市場の将来性は有望。
- 日系企業の問題は現地の制度や環境にあるため、事前調査に加えて臨機応変な対応が必要。
メリットもデメリットも極端で、まだまだ一筋縄ではいかないインドです。
しかし、あくまでも個人的な意見ですが、インド大使館参事のセミナーでのお話しぶりには、政府の意気込みを感じました。
政府が協力的な今、日系企業にとってはこれまでに無いチャンスと言えるのではないでしょうか。
コメントする