行政書士の横山です。
イラン・イスラム共和国大使館あての領事認証について、2回にわたってご紹介したいと思います。
1回目はアメリカとイランの関係について、2回目は領事認証の事例について、解説していきます。
書類にイラン大使館の認証が必要という特許事務所さんが、アメリカ在住の日本人社長様のサイン認証について、ご相談くださいました。
アメリカとイランは正式な国交がないため、アメリカ国内にイラン大使館がなく、領事認証業務ができないとのこと。
国交がないといえば日本と台湾も同様ですが、お互いに友好的な関係ですし、領事認証も日本国内でできます。
台湾の領事認証についての記事はこちら↓
アメリカのイラン大使館
現在にまで及ぶアメリカとイランの不仲の原因は、ざっくり言えば石油の利権をめぐる長期にわたる争いに、複数の国が絡んできたためと理解しています。
何十年もの間に様々な事件や戦争による犠牲があり、現在のようなこじれた状態になりました。
それでも民間ではビジネスや身分系の交流がありますので、その手続きは必要です。
アメリカでは、「敵国」イラン国民のパスポート更新や渡航ビザについて、「パキスタン大使館の中の窓口」という形で解決を図っているようです。
イランの大国としてのプライド
日本人の私から見ると、イランはなぜアメリカと不仲なのか、国際的に制裁も受けているのだから、核開発もしなければ良いのに、と思っていました。
今回の事例のおかげで、恥ずかしながら初めてアメリカとイランの関係について考えるに至ったので、概略をシェアしますね。
中東の地図を見ると、周辺国に比べるとイランはとても広い国です。日本の国土の数倍はあります。
イランにとって大切なのは、民族の概念です。
歴史的に自分たちはアラブではなくペルシャ民族で、近隣のアラブ諸国とは一緒にして欲しくない。
また、もう一方のアラブ人にも、ペルシャ人と間違われたくないという意識があるそうです。
いにしえのペルシャ帝国といえば、トルコやギリシャ、中央ヨーロッパまでおさめる大帝国でしたから、イラン人にはペルシャの大国の子孫であるというプライドがあります。
アメリカやヨーロッパと対等に渡り合って当然、核開発にしても、自国民と文化を守るためには当たり前の防衛手段と考えているのでしょう。
また、イスラム教の対立でシーア派とスンニ派という言葉をよく聞きますが、世界中のイスラム教徒の9割はスンニ派で、1割がシーア派だそうです。
イランのイスラム教はシーア派なのですが、イラン人は、自分たちが全体の1割しかいないシーア派であることからも、特別感を強めているようです。
アメリカ渡航ビザ
アメリカ政府は、現在アメリカに入国するすべての外国人に対し、過去5年間にイランに入国履歴のある場合、ビザを取得しなければ入国を認めない政策を取っています。
日本人も例外ではなく、トランジットや商用、駐在などでイラン入国歴のある人は、ビザ申請時にイランに入国した理由を証明しなければなりません。
イランの首都テヘランは観光地として数多くの世界遺産がありますし、ビジネス環境も整っていますので、入国履歴のある人は多いです。
ビザを取るのは仕方ないにしても、申請料がかかる上、平日に面接を受けなければならないことがとても面倒だと、入国歴のある人から聞いたことがあります。
次回は、在日イラン・イスラム共和国大使館での領事認証について、事例をご紹介します。
2019年追記
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オンライン申請はできたけど、サポートドキュメントの種類や作り方がわからない、という方にお勧めします。