つけ麺で有名な「大勝軒」沖縄店のオーナーであり、タイのバンコクとチェンマイでも店舗展開している飯田敦志さん。
もともとサラリーマンだった飯田さんがラーメン屋さんに転向、沖縄店を開店後、海外出店も果たしたのは、どんな経過だったのでしょうか?
入門するときに飯田さんは、名物店主の山岸さんに「将来、タイで大勝軒をやりたい」と話しました。
山岸さんは「それは面白い、是非やってください」と言ってくれたそうです。
つけ麺とラーメンの調理、店舗経営の基本を池袋店で習得したのちは、暖簾分けをする兄弟子の、店舗開発からオペレーションを軌道にのせるまでを、数カ所に渡り手伝いました。
沖縄で独立起業
さて大将の承諾はいただいたし、ラーメン店オープンの経験もできました。
でも、タイでの商売には信頼できる現地パートナーが必要不可欠という考えから、ひとまず保留とします。
自分の店をやる場所として、思いついたのが沖縄でした。
東京近郊には大勝軒はたくさんあるし、自分は暖かいところが好き。
キレイな海と快適な都市機能がある街なら楽しそう、そんな場所はホノルルかペナン(マレーシア)か那覇くらいだそうです。
意外なことに、飯田さんにはこれが初めての沖縄入りでしたが、那覇のラーメン市場調査を開始。大勝軒に入門してから約3年後のことです。
沖縄は、人口増加県。でもここでも麺類は、沖縄そばか、中華料理店のラーメンしかありませんでした。
暖かいので、麺を冷やして出すつけ麺はきっとうけるはず。
ターゲットは地元の人だけでなく、観光客や都市部からの移住者もいます。
また沖縄は人件費が安く、これは雇う側にしてみると大きなメリットです。
当時はまだ誰も沖縄に大勝軒を出店しておらず、山岸さんも沖縄出店に賛成してくれました。
オートバイに荷物を積んで、有明からフェリーで出発、2泊3日かけて那覇へ移住したのが、調査を始めてから約半年後でした。
ここで、なぜフェリーで行ったのか質問したところ、
「独立開業で地元を離れるのに、何だか船で行くのがふさわしいと思っちゃったんだよね(笑)」とのこと。
周到な準備と調査分析を行う一方で、人間味あふれる飯田さんなのです。
沖縄のお店は、宜野湾にあります。
私もお邪魔しましたが、市内から恩納村や美ら海水族館に行くときに通る国道沿いで、看板もよく目につく立地でした。
プロ野球のキャンプ地も近く、選手や報道関係の方も頻繁に訪れるとか。
また、オープンの翌年(2007年)には、名物店主の山岸さんが現場を引退することになり、沖縄店にもマスコミの取材が来たそうです。
タイ進出
沖縄店は順調に軌道にのりましたが、タイでラーメン店をやりたいという気持ちは常にありました。
飯田さんの持論「好きだと思っているとアンテナが立って、必要な情報が入ってくる」とは本当みたいです。
あるとき業界専門誌で、タイの財閥オイシグループが、バンコクで「ラーメンチャンピオン」という、日本のラーメン店を集めた商業施設を始めるという記事を目にしました。
情報元に連絡してみたところ、オイシグループのタン社長が来日、出席するパーティに参加することになりました。2010年5月のことです。
パーティにはラーメン雑誌などでもよく見かける有名店の店主が多数来ていてビックリしたそうです。
そして7月にはバンコク現地の視察ツアーに、自費で参加。
その後は、オイシグループと現地法人を営む日系のコンサル会社に従って準備を行い、あっという間に2010年11月30日のオープンとなりました。
ちなみにタイでは、飲食店などのサービス業を外資100%で行うことができません。
そのため、この商業施設(ラーメンチャンピオン)においては、タイの現地法人が店のマネジメント全般を行い、日本側(ラーメン店舗)は、主に調理やサービスの指導を行うという業務分担の契約を交わした上での事業立ち上げとなりました。
そして今年の2月に、日本人の知り合いが出資している別の現地法人が、ラーメン事業として大勝軒バンコク店を正式に引き継ぎ、飯田さんも出資。
名実ともに、大勝軒バンコク店の経営者になったのです。
今年開店のチェンマイ店は、チェンマイのニマンヘミン通りという、東京で言うと青山のようなおしゃれな地域にあります。
つい先日隣接するホテルがオープンした、商業施設の中にあるため、これから忙しくなりそうです。
バンコクに続きチェンマイと、タイでの出店も順調だったように思えますが、やはりそこはタイ。
タイ人スタッフの教育や、味を一定に保つこと、材料の調達など苦労はたくさんあるそうです。
書類上の手続も、時間がかかったり後出しジャンケンのようなことを言われたり。
ただ、そこは「好きを仕事にする」ことで救われているのかな。
「(各方面の手際の悪さについて)はらわたが煮えくりかえることもあるよ。タイの店は、赤字が出ないくらいで頑張る(笑)」
と言いながらも、楽しそうな飯田さんに、今後の展望を聞いてみました。