
「制度は書類ではなく、人と責任で動いている」
先日、フィリピン・ミンダナオ島にあるミサミスオリエンタル州を視察する機会がありました。
一般的には「治安」「リスク」といった言葉が先に立ちがちな地域ですが、
今回は観光ではなく、顧客に同行する業務視察という明確な目的を持って訪問しています。
この記事では、
・なぜミンダナオ島に視察に行ったのか
・実際に行って感じた現地の行政の空気
・外国人支援業務にどう活かせるのか
を、行政書士の視点から整理して書いてみたいと思います。
なぜミンダナオ島に視察に行ったのか
私が今回ミンダナオ島を訪れた理由は明確です。
長年協業しているフィリピンの人材送り出しエージェントがあり、そのご縁から、このたびミサミスオリエンタル州政府による日本語教育プロジェクトが立ち上がりました。
単なる民間主導ではなく、
「州政府が正式に関与するプロジェクト」である点が大きな特徴です。
日本で外国人就労支援を行う行政書士として、
・どのような体制で人材育成が行われるのか
・現地行政はどこまで関与しているのか
・本気度はどの程度なのか
これらを机上の情報ではなく、現地で確認できるまたとないチャンスと判断し、視察に同行しました。
行く前に想定していたリスクと、実際に感じたこと
正直に言えば、行く前は不安がゼロだったわけではありません。
フィリピンというお国柄から、
「プロジェクトを立ち上げて日本側が投資をしても、
しばらくすると音信不通になるのではないか」
というイメージを持つ方も少なくないと思います。
しかし現地に行ってみて、その印象は大きく変わりました。
今回のプロジェクトは州政府の事業です。
つまり、失敗すれば行政の責任になる。
そのためか、現地職員の対応からは
「とにかく成功させなければならない」
という本気度と緊張感がはっきり伝わってきました。
民間任せではなく、行政が前面に立つプロジェクトの重みを、
現場の空気から感じたのが率直な感想です。
現地で感じた行政・制度の空気
フィリピンは出稼ぎ国家とも言われ、海外への人材送り出しには慣れた国です。
一方で、近年はトラブルも発生しています。
実際、州政府のプロジェクトで送り出された韓国において、
フィリピン人就労者が
・不利益変更を受けた
・虐待に近い扱いを受けた
といった事件が起きたばかりだそうです。
この件については、
州知事自身が強く気にかけ、同様のトラブルはもう許されないという決意が伝わってきました。
「送り出して終わり」ではなく、
送り出した後の責任まで行政としてどう考えるか。
これは、日本で外国人支援に携わる行政書士としても、
非常に重く受け止めるべき視点です。
「受け入れて終わり」ではなく、
受け入れた後もどこまで関われるのか。
日本の制度と比較して見えたこと
日本の行政と大きく違うと感じたのは、
見た目や雰囲気のカジュアルさです。
州政府の職員の方々は、
ほぼ全員がポロシャツにデニム、スニーカー。
いわゆる「偉い人」も、とても気さくでフラットな印象でした。
もちろん、見た目だけで制度の優劣は判断できません。
ただ、日本のように
「役職=威厳」「服装=上下関係」
も一つの要素となる行政文化とは、かなり空気が違います。
その分話が早く、距離が近い。
人と人の関係性で物事が動いていることを強く感じました。
外国人支援業務にどう活きるか
フィリピン人の就労支援は、
他国籍者と比べると手続きが多く、ハードルが高いのが実情です。
一方で、
・信心深く真面目
・明るい
・地理的に日本に近い
という強みがあります。
マニラなどの都市部だと、「とにかくお金重視」という傾向も感じますが、
ミサミスオリエンタル州のような地方では、
日本で働きたい若い人が多いと感じました。
というより、若い働き手が余ってさえいるのではないかと。
日本側の受入企業にとっても、
地方出身の人材は定着率の面でメリットがある場合が多く、
今後の外国人支援業務において、
重要な地域になる可能性があります。
視察を終えての気づき
今回の視察で何より印象的だったのは、
どこに行ってもとにかく歓迎されたということです。
それだけ、日本の雇用会社に対する現地の期待が大きい。
そして、そこに関わる行政書士の役割は確実にあるでしょう。
この業務を始めて7〜8年。
正直、当初は
「自分が海外視察に同行できる日が来る」
とは、まったく想像できませんでした。
目の前の手続きをひとつひとつ積み重ねた結果、
業務そのものが育ち、
今回のようなプロジェクトにつながった。
そのことに、静かな感慨を覚えました。
観光ではなく視察。
効率よりも納得。
これからも、自分軸を大切にしながら、
制度と人をつなぐ仕事を続けていきたいと思います。
